美容師土台が生み出すアートディレクション

美容師のアートディレクション
人の感情を揺さ振り違う世界に繋ぐ扉へ
        ーUshiさんー

福島農家震災復興支援=【野菜人間プロジェクト】
ホームレス小谷さん写真展=【天才万博】

[複業美容師] ゲストはアートディレクション活動をしているUshiさんです。
よろしくお願いします。
まず複業でのアートディレクションとはどんなことをされているのでしょうか?

[Ushi] 最初は美容師としてのデザイン力を震災復興支援で使えないのかと考えた時に福島の農家さんの風評被害を知り、それに対して広告作りでこのデザインの力を使おうと。
そこからNPO法人の方々とスタートした【野菜人間プロジェクト】をまず一つとして福島復興支援活動を始めました。
その次に今やっているのは【[ホームレス小谷さん]の写真展のアートディレクション】です。

【野菜人間プロジェクト】って面白いネーミングですがどんなものですか?

福島の農家さんの「今」を知ってもらい応援していこうという「キッカケづくり」を目的としたアート活動による支援広告製作です。
「福島の農家さん」x「アート」x「農作物」でインパクトある目を惹く&メッセージを込めた広告を作成し、見てもらう→知ることへ誘導し→風評を鵜呑みにするのではなく自分で考えて見極めてもらう
そして「知ってもらう、忘れないでもらう」から「福島の美味しい農作物がもっと売れるようになる」へ繋がるように。

アートで復興支援や風評被害を払拭できるように支援って難しい感じがするのですが?

僕は美容師なので堅苦しく難しい感じではなく、メッセージを込めつつも見た人達が楽しんでもらえるデザインを考えました。
実際に『楽しむ』はポジティブに復興を目指す農家さんとの活動コンセプトでもありましたし、楽しんでもらえた方が拡散力もあるのではと。
だから『攻め』のデザインで色彩的にも目を惹くような作品にしました。まず見てもらわないことにはその作品に込めたメッセージも伝えられないし復興支援の足掛かりにもなれないので。

確かに。知る入り口に立つ「きっかけ、とっかかり」としてはかなりインパクトあって面白いですよね。これなんだろう?ってなります。

1人でも多くの方に現状を知ってもらい応援してくれる方を増やしたかったし、経年で忘れて行くであろう方々にも目を向けてもらえるように。
作品もモデルの農家さんが実際に育てた農作物を使い収穫期に合わせて撮影したので僕の考えに賛同してくれたカメラマン(スメシくん)と一緒に東京⇄福島を1年位往復しました。
農家さん達と交流でき僕自身得るものがいっぱいありました。なにより農家のみなさんが前を向いていてポジティブな姿で素敵な人ばかりでした。

僕自身の支援の力は些細なものかもしれないけど、美容師としての力で広告製作で留まらずに支援広告を掲示する場として美容室は最適な場でもありました。「人が集まる」「待ち時間がある」「全国どこにでもある」支援広告を長く置いてもらうことで長い支援活動に繋がる。
それにより<個人の支援活動>ではなく<美容業界の支援活動>にもなり、美容室が『髪を切る場所+支援活動の場』にもなり得るんです。美容師だからこそできることだなと。

すごい。そこまで考えての広告製作だったんですね。確かに美容室は展示場としては良い場所になりますね。

ただこの【野菜人間プロジェクト】は様々な理由で結果的には失敗に終わりました。農家さん協力の元進めていた活動でなんとしてもカタチにしたかったのですが実際にはできませんでした。本当に申し訳ないなと思っています。

相方のカメラマン(スメシくん)がその後も農家さん達の販売サイトの野菜写真を撮影したりと繋がりが続いているのでそのことが救いですね。
今回の活動がきっかけとなりプロジェクトが終わっても自主的に支援活動を続けているスメシくんは本当に素敵で感謝しています。

相方カメラマンのスメシくんと
そうだったんですね。
では今やってる「[ホームレス小谷さん]の写真展のアートディレクション」の方はどんなことを?

僕は芸人で絵本作家でもある西野さんのオンラインサロンに参加しているのですが、その中で[ホームレス小谷さん]と繋がり小谷さんの写真展のアート製作を担当しているんです。
ここ数年イベント『天才万博』をホームレス小谷さんが年末5日間位開催していてそれの打ち上げの30日に写真展も一緒に開催しようと今回やるんです。

ホームレス小谷さんをよく知らないんですけど、その方はどんな方なんですか?

元々は売れない芸人さんで西野さんの勧めでホームレスになったんですが簡単に言うと「1日を50円で売る住むところを持ってない人」です。
50円で何でもしますよって人で、宿もなくて誰かに泊まらせてもらったりしてるんですけど、50円で買う(お金)目的じゃなくて<信用経済を人を通じてデザイン>している人ですね。
例えば50円以上の働きをした場合に50円じゃ悪いからってみんな御馳走してくれたりとか、自分が結婚式をする時にクラウドファウンディング立ち上げると50円で買ってくれた人達が支援を出してくれたりとか、お金のあり方ってそう言うものだよねってお金のあり方を提示して生きてる人なんです。
基本は日本にいるんですけど世界中で50円で買われるよう世界中回っています。

旅費払ったら世界中どこでも来てくれるんですね。
で、Ushiさんは小谷さんの写真展のアートディレクターなんですね。
写真展のテーマとかはあるんでしょうか?

今回は『食料問題』を。
作品を作る時に単に面白いじゃなくてバンクシーみたいに社会を風刺するような作品を作った方が世の中のメリットになると思い、じゃあ何かの問題を掲げていきたいって思ったんです。
「七つの大罪」の中の1つであるテーマの『
貪食』をとって食糧難だったり食料廃棄だったり食料問題に対して風刺する作品に繋げています。
今後のホームレス小谷さんの写真展の展開は「七つの大罪」をテーマにそれぞれいろんなコンセプトで進んでいく予定です。

+αの意味を持つ作品を
じゃあ、今回の貪食のテーマが終わったら次の大罪が待ってるんですか?大変そうですけど次のテーマが楽しみでもありますね。

そうです。次の大罪に向けての作品作りへ。大変ですよ。
でも作品に意味を持たせていきたいんです。
小谷さんは世界中歩き回っていていろんな人に逢って毎日泊めてもらっているのでテーマに掲げる面も色々目の当たりにして体験もしています。ホームレス小谷さんがそれを作品にしているのが一番世の中に浸透しやすいんですよ。
バンクシーも美術館に展示していても社会の風刺はできないから路上アートをするって言ってたんですけど、そういうのから僕も影響受けていますね。

アート活動の複業ってどれくらいの割合、頻度とか時間の割き方でやってるんですか?

僕は今走りの段階でその出だしが福島であり小谷さんってことですね。
写真展は前回から3,4ヶ月になるんですがその間に次の写真展に向けて作品を撮影するという感じなので撮影日は大体1,2日です。
作品のテーマやどう見せてどうやるかっていうディレクションを僕が考える時間はもっとあるんですけど、サロンワーク外で時間を作りながらやるって感じです。
元々アートワークとかが好きで日常からいろんなアドバイス、アイディアが浮かんでくるので特に決められた時間でガッチリっていうよりは日々考えながら生活しててここぞっていう時にそれをまとめるって感じですね。

ではサロンワークはどんな想いでやっているんでしょうか?

サロンワークでは一貫してサロンのコンセプトである『次の日からお客さんがセットしてどのぐらい可愛いかを勝負しよう』が最優先です。
そこは徹底的に美容師ですね。今日美容師がセットしたスタイルでの勝負じゃなくて明日からのスタイルが勝負ですよっていう。
サロンワークもクリエイションでアートなんですが振り幅は限られていく(対お客様で似合わせ、手入れしやすいなどの制限がある)ので僕がやりたいアートとはまた違うのかなと。
美容師の時は<ザ・美容師>です。

サロンワークを本業とされていますが今後アートディレクション方面に重点をスイッチしていこうと思ったりしますか?

基本的に僕は本業はやっぱり「美容師」で。
日本社会の中で特に本業を持ってない人ではチャレンジできないところにチャンスがあるんじゃないかなって思ってるんです。
アートワークとかって例えば画家って絵描きだけじゃ食べていけないことの方が多い。ってことはバイトとか他の収入源があって活動しているってことになる。
僕は美容師って土台があるからこそそこに力を注げるので美容師の土壌を崩して複業の割合を増やしていくっていうよりは美容師をやりながら活動できていることの方が面白いことができるんじゃないかなって思っています。

美容師は可能性で溢れている
Ushiさんがアート活動を始めたきっかけを教えてください。

スタートがいくつかあるんです。
美容室を始めてお店としてのブランディングやリクルートを強くしなくちゃって時に何か特技がなきゃダメだよなって思った。で、自分クリエイション得意だったなと。これ打ち出していけば他のお店でもいつでもできるブランディングじゃなくて希少価値の高いブランディングができるかな→じゃあクリエイションやろうって考えたのが最初です。
そして、どうせクリエイションやるんなら日本一になろう!と。
日本一の定義って何だろう?って考えて、コンテストでグランプリ獲ることなのかな?それって今までの延長線でもうある土台をを反復してるだけじゃないかと。今年もグランプリがいて来年もグランプリがいる。それも日本一だけど、僕の中での日本一は「コンテストの優勝だけじゃなくて+αしなきゃいけないな」と行き着いたんです。
だからもちろんコンテストでグランプリを獲ることも目指すんですけどそれだけで満足するんじゃなくてその一歩先に何かをした時に初めて外の世界と美容界のクリエイションが繋がるきっかけになったりとか。

美容師のアートで考えると髪の毛や人物っていうところが切っても切り離せないような気がするんですけれどUshiさんの作品の定義はどこにありますか?

髪は切っても切り離してます。
髪だけにすると髪のプロモーションとか美容枠が絡んできたところでしか活動の範囲が広げられないので(業界紙とか)、それだとその先が見えないので髪も無視して作品を作るってところで勝負をしていこうと思っています。

定義としては<美容師として培ったスキルを利用して作品を作る>ことですね。
髪の毛もあればそこでスキル出しますけど、なければ構図や写真の撮り方、メイクだったりで十分美容師としてのスキルは出せるので。
基本的には素材=人として捉えていますが写真を撮るというスキルに美容界で学んだものを活かしていくので作品の上限は特に考えていないんです。

Ushiさんの収入面で、写真集売上げあったりとか、小谷さんのはアートディレクターとしてギャラは発生してるんでしょうか?

今はまだないです。
やりたいです、やりましょうでスタートしたので現段階でお金を稼ぎたいです、仕事としてやりたいですでもなくて僕はそれをやらせてもらうことによっていろんなところに繋がると思っているのでそこの価値はお金ではないですね。

そこに別の価値を見出しているんですね。一方で日本だとアート作品での収益化が難しいのも現実面であると思うのですがどう考えていますか?

僕もそんなやってるわけじゃないから語れないんですけどね。
現実に考えて美容師が作っているヘアクリエイションの作品を誰か買うのかって言ったらほとんどいないと思うんですよ。
海外では絵を家に飾る土壌があるから路上で売ってたとしても買ってくれるけど日本はそうじゃないから尚更難しい。
誰かもわからないようなモデルさんのめっちゃ奇抜なヘア写真って日本の家には合わないかもしれないし。

でも僕の場合はその本体を売ろうとしてるんじゃなくてそこで培った美容師の力を外に引っ張っていって逆にそっちが成功したら元に戻ってくるイメージなんですよ。
そもそもそこで勝負したらラチがあかないので。
いろんなものをアートディレクション活動をしてそれが認められてきたら美容師って元の僕の根元がクリエイションになってそこの世界って面白いっていうのを見て欲しいなって。

「本業これで」っていきたいけどそこだけではフューチャーされないから他のところで目を向けてもらって、でもあの人って実際はコレだよねみたいな

そうです。やっぱり美容師も尊敬できる先輩方が今までの土壌をガッチリ作ってきているので、同じことやっていてもダメだなって思ったんです。
じゃあ毎年グランプリ獲ったらそれでいいかって言うと違って、それ+α先輩達がやっていないことを初めてやって自分の意味があるのかなと思ったのでそんな感覚もありますね。
今までやっていないところをとにかくチャレンジしていこうって。で、それが違うところに繋がれば。
実際に「ホームレス小谷さんの写真展をやってます」、それ作ってるのが美容師の僕です。→なんで美容師がやるんですか?ってなるんですけど、それがもうプロモーションになるじゃないですか。
美容師でこういう作品を作るコンテストがあって、実は美容師結構みんなそれに情熱的にやってるんです、今度見てくださいって。
それが世の中に広がるってことだと思うんです。

大衆を巻き込むためには大衆の見てる目線に自分がいかないと触れないんですよね。

そうだと思います。僕がどこの誰かわからないモデルさんの作品を作ったところで大衆に届かないので著名な人をモデルに作らないといけないなと思って西野さんにプレゼンに行ったんです。

なるほど。ちなみに西野さんのオンラインサロン面白いものですか?
自分の中で価値観が変わるものや発見するものはありますか?

めちゃめちゃ面白いです。
僕はあまりファンとかにならない方ですが西野さんの思考はとても勉強になります。オンラインサロンのメルマガみたいなものを読んでいるだけで自分だったらこうしなきゃなとか美容の経営にすごく役立つことがいっぱいあります。
例えばオンラインサロン内でのいろんな問題が立ち上がるんですけど、それが美容室内でも同じことが起こったりする。
その時にどういう風にこれを捉えなきゃいけないのかとか勉強になったりとか結構マッチするんですよね生き方とか。

 

 

全然違う世界っぽいのに美容の経営に役立つのは意外です。
Ushiさんコンテストとか出ると近い感覚でアート活動してる人と知り合えると思うんですけどそういう人と絡んで活動とかはないんですか?

今のところ僕自体がチャレンジの出だしなのでまず自分の足下見ながらしっかりここで形を作ろうと思ってますね。
で、その後に何か繋がることがあるんだったら巻き込んでできたらいいかな。
まずは自分で進んでいこうと。
やってるうちにいろんなことが見えてくるんです。例えば美容師で僕みたいなことをやっている人が多分誰もいないと思うんです。
誰もいないってことは僕のブランディングはそこにもあるんです。この取材もそうですけど普通に美容師やってたらなかった。普通に美容師やっていたら会わない人に会っていく。

今後の展開でやろうと思っていることはなんでしょうか?

今の段階だとホームレス小谷さんのを進めて、今度は作品をどうやって広めていくかをもうちょっと力を入れてやっていきたいですね。あれもこれもっていうより今はこれに集中してる感じです。
ただコンテストには出すんですけどね。それが目的じゃなくてそれもやらなきゃいけないことだと思うし楽しいことなので。

あとは美容室苦手な小さい子供が美容室って楽しいとこなんだよ<美容室に行きたいって思うような絵本>を出したいですね。
美容師が買いたくなる絵本にして美容師が一対一で対面してお客さんにも勧められる。
この環境で美容師だからこそ作れるものだと思んです。

絵本いいですね。しかも販売ルートも確保されているし。
Ushiさんのようなアート活動したいなとか複業にしたいなっていう美容師さん達にアドバイスをお願いします。

美容師は美容師っていう土台があるので、普通土台がないとチャレンジできないことにもチャレンジしやすい。
本業を持っていることは結構バカにならなくて本業あるからこそ余力がある
だから何かやりたいことがあって躊躇してるんなら本業を大事にしながらチャレンジした方がいいと思います。
それはある意味美容師の特権だと思います。
美容室はコミュニティの場なので美容師は自分のやっていることが自分だけの中じゃないチャンスがいっぱいあるんです。
例えば復興支援しようとしたら美容師を巻き込んでいったらその美容師を支持するお客さんも巻き込んで広告をうてる。自分達は世の中が「やりたいけどできないゾーン」にいる。
その美容師とお客さんの関係性の信頼関係をフルに活用してもっとできることがいっぱいあるんじゃないかなと。

世の中にはたくさん天才がいて東大出のエンジニアの人とかに会って話すとやっぱ勝てないなって思う。勝てないから勝てないで終わるんじゃなくて自分が勝てるところは何なんだろうからスタートしてるんですよね。
ホリエモンだったりメンタリストDaiGoだったり西野さんだったり落合陽一さんだったりすごい人が沢山いる。その人達に会った時に「自分に価値を見出せる勝てる武器」を持っておかなきゃとセルフブランディングでもあります。
自分を面白いと思ってもらえる題材がないと人の繋がりも増えない。
福島の復興支援や小谷さんのも武器を持って初めてわかったんですけど、全然世の中違う人たちと話しができるようになったんです。それも大きいなって思うのでもっとチャレンジしていった方がいいと思います。
美容師の可能性はまだまだ使い切ってないと思う。美容師を掛け合わせていくことはチャンスがあると思う。
これからの時代お客さんを抱えてるっていうのは強い。いろんなデータを取れるってこともあるしこの信頼関係を築いている関係性はいろんなもの仕掛けられます。

ありがとうございました。




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